昭和40年代後半、東京都内下町の創業昭和30年のめっき工場の長男として生まれ、
父親の洗脳によって半ば強制的に後を継がされた(笑)私がこれまでお請けしてきたバイクパーツの再めっきに関して
専門家からの立場として、日本全国のレストアラーの皆様に情報を提供していきたいと思います。インターネットが普及する以前から、旧車のレストアをなさっていた強者の先輩方は一体どの様にして
再めっきを依頼してきたのか、恐らくご近所の町工場の伝を駆使してものにしてきたのだろうが
現在は”再メッキ”や”バイクレストア”などと検索するだけで、いろいろな情報が集まるから我々としてもありがたいことだと思う。
因みに”鍍金(めっき)”とは日本語であるため、業者にメールなどで問い合わせする際には、”めっき”とひらがなで明記しましょう。
これだけで、ちょっと知ってる人として対応してくれる…….と思います(笑)。
私自身、幼い頃から車やバイクが好きだった。仮面ライダーのスタントシーンに興奮し、西部警察や黒バイデカなんてドラマもあったと思う。
幼稚園生の時、将来の夢を各々皆の前に出て発表する機会があった。
私の番になり、大きな声で発表した。
”僕は大きくなったら……..
暴走族になりたいです!!”
お恥ずかしい限りですが、金八先生やスクールウォーズ世代のお兄ちゃんたちに囲まれて育った私はあの、直管の音量に興奮した。
今思うと、あの乗り方はどうかと思うがエンジン音含めバイク、車、乗り物を操ることに喜びを感じる男は少なくないと思う。
その自分の操るもの、宝物がクタクタで傷だらけだったらどうだろうか、もちろん燻んだアジもあると思うが
ボンネットに映る景色、タンクに反射する外灯、綺麗に越したことはないと思う。
最近では、エイジングと言って逆に新車にサビ塗装などを施す趣向もあるが、
当時の、今となってはもはや手に入らない車両をまるで新車の様に綺麗な状態で乗ることの喜びはこの上ないと思う。
これまで金属、乗り物の外装パーツに携わる機会があり、
それなりの経験値、知識はあるがタンクやサイドカバーなど塗装に関しては専門外
それだけで食べてきた訳ではないので塗装に関しては記述は控えようと思います。
レストアラーの中には、中途半端な知識でハードクロームですか?
無電解ですか?などと浅はかな知識を元に質問してくる方々がたまにいらっしゃる。
今の時代、スマホがあればそれなりに情報はあるが、
これまで発信されてきた件数、
その畑の沢山のプロが発信してない以上、リアルな情報は少ない事を知って下さい。
餅は餅屋
コレ幾らでできますか?
どの位綺麗になりますか?
だけで、設備、知識と経験値があれば最善をつくしてくれるはずです。
少なくとも私はクレーム対応する位なら、作業に没頭して感謝のメールを読む方が
余程、精神衛生上よいのでコレを徹底しています。
勿論、ご期待にお応え出来ない個体もありますが、
それはソレ
◯サイクに幾らお化粧しても…って話です。
大金払って整形するか
元々落札するのに金の掛かった素材
良質な素材にお化粧してより良い美女が生まれるって事を忘れないで下さい。しかし、素材が傷んでいて腐食の跡や、穴もある。けど金に糸目はつけない!な方はご相談下さい。
これまでのネットワークを駆使して、ご希望に添える一品をお届けすることも可能です。
私はめっきの専門家です。専業はクロームめっき。マフラーやフェンダー、ハンドル、キック、チェンジ、ブレーキ..
あの色です。この分野で皆様の気になる点を情報提供させていただきます。
未だ業者に依頼したことがない方、依頼したことがあるけど、満足のいく仕上がりでなかった。
満足したけど、これはどうなのか。。これまでに経験させて頂いたことを不定期になるかも知れませんが綴らせて頂きます。
我々も商売として毎日時間を費やしてお預かりさせて頂いたパーツを綺麗にすべく努力しています。
皆様のお気持ちはわかります。納品後に、見違えた!有難う!又お願いします!などのお言葉を頂けると励みになります。
その言葉を頂ければ昼間の疲れが飛びます(笑)
逆にこの仕上がり何なの?頼まなければよかった!金返せ!などトラブルも過去にいくつかありました。
我々からすると、だ、だってそもそも◯サイクじゃないすか笑
我々は変な店みたいにCG?修正?をみせたりしません笑
素材を最善に仕上げる為に最善の努力をするまでです。
パーツによっては深いサビや傷があれば、素地を綺麗に整地仕切れないものもあります。
我々は魔法使いではないのです。
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現代の車やバイクは軽量化が進み鉄に限らずアルミやカーボン、マグネシウムなどあらゆる素材で形成されているが
我々が愛してやまないモノは所謂鉄の塊である。
鉄は塗装するか金属皮膜で表面を覆うことでサビから守られているのだが、残念ながらめっき皮膜も”金属”である以上サビは発生してしまう。
金属表面に水分と酸素が触れることで酸化が始まります。表面の鉄分子が一部イオン化し酸素と水と反応することでサビが発生するということ。
….ということは、水分に触れさせなければ良いのです。しかし残念ながら空気中にも水分があることはご存知の通り。
室内で保管していても長時間放置していれば、車両に埃がつもりその埃が空気中の水分を含んでしまうことでもサビは発生してしまいます。
では、金属製品をサビから守るには? やはりこれは小まめな手入れが肝心です。
洗車など行った際には必ず水分を除去し、その後にワックスを掛けることで十分な防錆効果は得られます。
ワックスは油分を含んでいる為、空気中の水分から表面を保護できるのです。
稀に、艶がなくなってしまったマフラーやフェンダーなどをコンパウンドで磨く方がいらっしゃいますが、これのやりすぎはあまりお勧めはできません。
クローム皮膜はせいぜい0.1〜0.2ミクロン程度しかない為、コンパウンドによる研磨を行うことで、クローム皮膜は徐々に薄くなってしまい、
下地のニッケル皮膜が出てきてしまいます。
ニッケル皮膜はやや黄色味がかった色で、酸化しやすい金属です。こうなってしまうと既にサビ発生までカウントダウンが始まっています。
このことからもコンパウンドを用いるのは、既に点サビが発生してしまった状態など、表皮を綺麗に整地しなければならない時の奥の手として
使用することをお勧めします。勿論、コンパウンドの後は必ずワックスで表面を保護することをお忘れのないように。
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お預かりするパーツはまず、油分を除去するためにアルカリ性の脱脂剤、強力な石鹸の様なもので洗浄します。
マフラーの内部汚れにもこれが効きます。その後は塩酸に浸してクロームめっき皮膜を剥離。
するとニッケルめっき皮膜が露出されますので、この皮膜は特殊な専用薬剤にて剥離します。
再めっきの仕上がりでもっとも重要なのが研磨になります。素材の傷やサビによる腐食痕を除去、整地しますが
例えばバイクパーツのフェンダーなど、これらは素材の厚みが1ミリ程度しかありません。
この様なパーツの表面に腐食がある場合、研磨にも限度があることは皆様にも容易に想像できると思います。
紙やすりなどでいうところの160番、180番、200番、220番という番手で研磨を進めていきます。
最終的に麻を折り重ねてできた、サイザルというバフで仕上げます。
この工程を踏まえても腐食が深い場合には、プツプツとした痕跡が表面に残ってしまっています。
”めっきを厚くつけてふさげないの?”
はい。無理です。
業者によってはパテなどを用いて特殊な下地工程を加えて仕上げることもある様ですが、金額的に現実的では無い様です。
また、めっき皮膜は形状による理由から、隅々まで皮膜が乗らないこともあります。
フェンダーの内側やライトステーなどの内側など。
めっきはパーツを治具というものに取り付けてめっき液に浸し、通電することで皮膜がパーツの表面に乗ります。
塗装の様に、スプレーなどで吹き付けるのとは違う為、入り組んだ部位や、電気の流れづらい部位に皮膜を乗せることができません。
下地に銅皮膜を施す事で、通電しやすくなりますが、表裏、隅から隅まで均一に皮膜をのせることは現実的に不可能であることをご理解下さい。ご注文頂くお客様方も様々で、もともと古いものだから出来るだけ綺麗にしてくれれば、、とお考えの方やほんの小さなピンホールすらクレームとする方も過去にいらっしゃった苦笑
先にも述べた通り、我々は魔法使いではないし、詐欺師でもありません。お預かりさせて頂くパーツをそれぞれ最善の仕上がりとなるよう丁寧に加工し、皆様に喜んで頂きたいだけです。今回、ざっと豆知識を紹介させて頂きましたが如何でしたでしょうかまた何か、ご紹介させて頂きます。皆様、くれぐれも事故の無いようお願い致します。公道では謙虚に、検挙には気をつけて下さい。*トップ画像は2011年に某会社役員 T様へ納品させて頂いた製品です。